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2017年01月28日

『この世界の片隅に』レビュー:想定の範囲内で進行する戦争映画

想定の範囲内でストーリーが進行するいわゆる戦争アニメ。
反戦が主テーマなのだろうが、残酷な描写をかなり抑え目にしている印象。

以外ネタバレレビュー。

物語は広島出身の主人公すずの視点で進行する。
相手がどんな人かも分からず嫁ぐことになったすず。
この時代の嫁という立場に同情を禁じ得ない。

我々は広島という街でこの後何が起こるか知っている。
それを知りながら、刻々のその出来事に向けてカウントダウンされていく。
画面には定期的に年月日が表示され、この否が応にも緊張感を高めていく描写はとてもうまいと思った。

ストーリー上のピークはこの広島の原爆投下場面ではなくて、その少し前、空襲の嵐で落とされた時限式爆弾により、嫁ぎ先の義理の姪っ子を右手ともども吹っ飛ばしてしまう部分。
何とも痛ましい展開だが、これ以外には目を背けたくなるような残酷描写はあまりない。
それ以外はほとんどがすずの日常をのほほんと描いたものだ。
戦況が熾烈を極めるにつれ、温和なすずも思い悩む場面が増えてはいくが、基本的には想像していたような悲惨な体験は出てこない。
が、逆にその悲壮感のなさが戦争の悲惨さをくっきりと表現している。
家族集まってわいわい過ごすのが当たり前だったものが、戦争により1人、2人と減っていき、皆それを当たり前のように受け入れ、そして空襲が日常茶飯事になることも満足な食事をとれなくなっていくことも、当たり前のように受け入れていく。
それが日常になっていく。
それがどれほど悲惨なことか。

渦中の人間にとってみればこの劇的な変化も連続的であるがゆえに受け入れられてしまう、受け入れざるを得ないものなのかもしれないが、冷静になって考えてみると恐ろしいことだ。
家族が消えていくことも、街が火の海になることも、満足に食事をとれないことも、どれもこれも今の成熟国家日本からすれば考えられないことだ。
想像だにしたくないことだろう。
それを日常として受け入れざるを得ない、戦時中の日本。
それを残酷描写や悲壮感を全面に押し出すのではなく、日常をくっきり描くことにより表現する。
話題になるのも頷ける映画だ。

主人公すずの声をあてているのんも素晴らしい。
女優でありながら全くの違和感なく視聴することができた。





posted by tom at 18:26| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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